今回は得意戦法である右四間飛車の対抗形の実践を見ていきたいと思います。

先手 右四間飛車
後手 四間飛車

二段同士の対局です。

後手は早々に美濃囲いの形を作りますが、玉を入城させず、藤井システムのような指し回しです。

34手目の△7二金で、後に下段飛車から△8一飛と回る構想が明らかになりました。

先手も戦いに備えて米長玉(端玉銀冠)を作ります。

△8一飛の準備として、△3三角と上がりましたが、先手としても攻めの準備が整ったので▲3五歩(39手目)~▲3八飛といつもの要領で仕掛けていきます。

後手は初志貫徹の△8一飛(42手目)でした。

先手は▲3五飛と走って飛車の横利きで受けにも利かせています。

それでも△8五歩を実行しましたね。

▲同歩△同桂▲8六歩(47手目)と桂馬を追って駒得にはなりましたが、△9七桂成をどう取るか悩ましいですね。

同桂や同角では次に△9六歩と突き出されてしまうため、ここは強く同玉と応じます。

△9六歩から清算して、駒割りは銀と桂香交換の駒得になりました(53手目)。

飛車の横利きがやっかいなので△3四歩を一発入れて何とかずらしに来ました。

▲同飛と取るのは面白くないので、▲9五飛が第一感ですが、▲2五飛△2四歩の交換を入れて角を活用しづらくしておいてから、▲9五飛とします。

9二に飛車を成られては困るので△8二金でしたが、玉をかわしながら飛車香の二段ロケットをセットします(59手目)。

△8四銀が有力で、▲9一飛成から交換する筋を読んでいましたが、ここは▲9四飛と途中下車した方が優りました。

△7五歩(64手目)と嫌味を付けてきますが、ここは見極めて▲3一飛と一段目を押さえて攻め合いに出ます。

この局面ではやや優勢を感じていました。

△7五歩~△8五歩とされた局面はかなり嫌でした。

前にも言いましたが、角が捌けず8八の地点に残っていると玉頭戦が辛くなります。

急所を攻められているので、一手間違えるとすぐに負けになりそうです。

とりあえず▲8一成香と詰めろを一発いれました。

△7二金と受けたところで、▲9八玉(69手目)の早逃げで何とか耐えていそうです。

△8六歩は大きい拠点ですが、▲8三歩とと金作りを目指した攻めが厳しそうです。

たまらず△9三飛(72手目)から歩を抜きにきますが、飛車を使わせることに成功しました。

後手は8筋に狙いをつけてきますが、攻め駒の入手を目指した△6五銀(78手目)は反動もきついため、疑問手だったように思います。

次に△8七銀が見えていて怖いですが、桂馬は渡しても大丈夫とみて、▲7四桂(81手目)で一手勝ちを目指します。

▲9九玉(85手目)と逃げて打ち歩詰めなのが大きく、何とか勝ちきれそうです。

実践では▲7三銀から玉頭攻めを緩和して勝ちましたが、▲6四香(89手目)からの詰みがありました。

終始難しい将棋でしたが、右四間の方針通りに攻めていき、最後は玉頭攻めをカウンターで返して勝つという必勝パターンでした。

お相手の方の作戦も面白く、とても参考になりました。

今回は後手番の最新戦法を見ていきます。

最新戦法といっても、今回紹介するのは最近になって見直された阪田流向かい飛車です。
阪田流向かい飛車は、100年も前からある戦法です。

阪田流向かい飛車(さかたりゅうむかいひしゃ)は、将棋戦法のひとつ。相居飛車模様から後手が変化する力戦振り飛車。元となる定跡は江戸時代からあり[1]阪田三吉1919年5月11日木見金治郎の七段昇段披露会席上で土居市太郎を相手に指した一局(東西両雄棋戦、結果は阪田の勝ち)が著名で、のちにこう呼ばれるようになった。(Wikipediaより)

この阪田流をここ最近連採して勝利しているのが、ダニーの愛称で親しまれている糸谷八段です。

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阪田流向かい飛車は相居飛車(角換わり系や雁木系)の将棋も指せないと採用しづらいのが難点ではありますが、後手番の振り飛車としては十分にやれる戦法だと思っています。

また、昨年の王位戦で菅井王位(当時)が指した阪田流三間飛車も印象的でした。

こちらは向かい飛車に振るところを三間飛車に振り、△3五歩~△3四金~△3三桂で2五の歩をかすめ取る狙いがあります。

こちらも機会があれば解説してみたいと思います。

私たちが将棋を指していると、次々に盤上の問題にぶつかります。

あるときは解決に成功し勝利を収め、またあるときは解決に失敗して負けてしまいますが、それが成功であっても失敗であっても、私達の将棋に対する理解は深まり、問題を扱う能力は高くなっていきます。

誤りを起こさない人間などというものはありえません。

人間であるからには、大なり小なり悪手を指してしまうのです。

失敗を深く反省し、そこから正しく学ぶならば次の対局に生かすこともできるでしょう。

しかしながら、一局の将棋を終わらせてしまうような大きな失敗はしたくないものです。

できることならば、十分に先の局面を見通して、この将棋はこの点に注意する必要があるなということに予め気付いて、確信を持って指し手を進めていきたいと思いませんか?

一寸先は闇だとも言いますが、何か正しい方針を知るための羅針盤のようなものはないのでしょうか?

盤上の問題の解決にあたって、誰もが手引きにするのは過去の経験です。

前にこう指して負けたから、今度はこう指してみようとか、こういう風に指していけば寄り筋だったとか、過去の経験を生かすことで正しい解答を導きだすことができるようになります。

また、自分の経験だけではなく、先人の残した定跡や棋譜に学ぶことで、過去の対局を追体験し、自らの経験とすることができます。

しかしながら、このような単純な経験論的な上達法は、未知の局面での方針を示してはくれません。

そこで、未知の局面での方針として、多くの経験を集約し、多くの経験によって確認された、格言が生み出されました。

例えば、「玉角飛接近すべからず」という格言を思い出すことで、王手で飛車角を取られてしまわないように予め遠くに逃げておいたり、逆に玉角飛接近形にするように利かしを入れて攻めることができます。

しかしながら、格言というものは、あらゆる局面に汎用的に使うことができるものではないので、たくさんの格言を作ることでカバーするしかありませんでした。

また、格言は常に正しいとも限りません。

例えば、居玉は避けよという格言の通り、居玉は流れ弾が当たりやすいため避けた方がよいのですが、藤井システムのように玉を囲う手数を省略することで早い攻めを作り、結果的に居玉の方が戦場から遠ざかっていて安全だったということもあります。

経験を集約して格言を作ったように、格言を集約して、より高度な方針を作ることはできないのでしょうか?

格言を集約したものが、棋理であると私は考えています。

棋理を局面ごとに現象させた形態が格言であるため、格言は言葉で表現することが容易に可能なのですが、それらを認識に集約したものが棋理であるため、棋理について言語化することは、現状では中々に難しくなっています。

では、どうしたら棋理についての理解を深めることができるのでしょうか?

これには現実世界の問題解決の方法を参考にしてみる必要があるようです。

上の文章を将棋の問題ではなく私達が生きていく上でぶつかる問題として読み替えてみましょう。

問題の解決には経験が役に立ちますが、未知の場面においては、多くの人の経験を集約した諺や格言が役に立ちます。

しかしながら、諺や格言も万能ではありません。

諺や格言を認識に集約したものが世界の理であるとすれば、どうすれば世界の理に近づくことができるのでしょうか?

これは歴史に学べば自ずと分かるように、科学によって法則性を明らかにしていくことが必要になります。

現実世界における科学に当たるものが、棋理というものの正体を明らかにするために必要なのではないでしょうか。

これはコンピューターにはどう頑張っても不可能なことであるので、私達、人間にとっての今後の課題になると考えています。


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